南太平洋に浮かぶスイスになるために



 
「所得税は一律10%、そしてGST(=消費税)を25%に引き上げれば、ニュー
ジーランドが海外の投資家にとって、もっと魅力的な国になるはず。」

そう提案しているのは、オークランドをベースに活躍する話題の不動産デベロ
ッパー、アンドリュー・クルックザイナー氏です。

ニュージーランドが将来、南太平洋に浮かぶスイスになるためには、今後、観
光、教育、貿易などと共に、もっと海外からのビジネスを積極的に誘致するこ
とがカギを握ると指摘しています。同氏によりますと、その中で最も大切な要
因となるのが税制改革で、現在の税率(個人の所得税の最高税率:39%、法人
税:33%)は海外からの投資家をもっと呼び入れるために最大のネックになっ
ている、としています。

所得税を個人、法人とも一律10%にし、その一方でGST(Goods & Services Tax
の略、NZの消費税で現在12.5%、内税)を25%にすれば、様々な管理コストが
削減され、脱税を試みる人間の数も減る一方で、外国資本がさらにニュージー
ランドに入ってくるのではないか、というのが同氏の提案です。

このスキームは大胆すぎて、実現するまでには、相当時間がかかると思います
が、世界を市場としてビジネスを行っているインターナショナルな企業にとっ
ては、確かに魅力な税制であると考えます。

なぜクルックザイナー氏がこうした提案をするかというと、その背景には以下
のような懸念が今後のニュージーランドにあるからです。

1)ニュージーランドから大企業がどんどんオーストラリアに本社を移してい
 く。
2)オフィスビルは空きスペースが増え、ビルのオフィス効率が悪くなる。
3)今後、オークランドなど都市部には新しいオフィスビルが増えるので、現
  在の既存ビルの空きスペースはさらに増えていく。
4)テナントは市街地から郊外へオフィスを移転させていく傾向が見られる。
5)市街地にはアパートメントの開発ばかりが目立つ。
6)情報通信の技術が進むと、インターナショナルな企業は(もっと有利なビ
  ジネス環境を求めて)海外に出て行ってしまう。
7)人口の増加が今までよりも緩やかになり、長期的には人口の減少傾向に向
  かう状況の中で、優秀な人材は積極的に海外で出て行き、二度と戻って来
  なくなる。

ニュージーランドにとって、こうした悲劇が起こらないようにするためには、
国として魅力的な政策が必要である、というのは確かですよね。その1つが、
現在の税率を思い切って下げるというのがクルックザイナー氏の指摘で、この
税制改正によって、外国企業の誘致が可能になり、外国人ビジネスマン/ビジ
ネスウーマンの増加、優秀な移民の増大、そして教育水準のレベルアップ、と
つながっていくわけです。

クルックザイナー氏はこのようなステップが実施されれば、ニュージーランド
の将来は今よりも楽観的なものになるだろうとし、以下のような影響を予測し
ています。

・バイオテクノロジーやコンピューター・ソフトウエア分野でのベンチャー企
 業がさらに成長する。
・ニュージーランドが農業分野のテクノロジーやコンピューター分野でニッチ
 マーケターになれる。
・海外で活躍している企業がニュージーランドのオフィスビルや労働力の経済
 的メリットを理由にオペレーションの一部をこの国に置くようになる。これ
 によって空室になっているのオフィスビルもテナントで埋まるようになる。


インターネットをはじめ、今後さらにITが進むと世界規模で今よりもいっそう
人間や企業の流動化に拍車がかかります。人口が400万人にも満たない小さな
国、ニュージーランドとしては、優秀な企業や人材を世界各国から受け入れる
ことが経済発展に不可欠と考えられ、昨年3月には思い切った移民政策が施行
されたことは皆さんもご存じだと思います。(アントレプルナービザや長期労
働ビザの施行、これは日本でも日経新聞に報道されましたね。)

ちなみにお隣の国、オーストラリアでは今年になってようやく二重国籍が認め
られました。その理由は「今後、IT分野などをはじめ、世界から優れた人材を
受け入れやすい環境を作り、国力をアップさせるため」というものです。
(注:ニュージーランドは二重国籍を認めていますが、日本政府は認めていま
せん。そのためニュージーランドで生まれ、日本国籍を取得した子どもは20歳
になる時点で、日本の国籍を取るか放棄するか決めなければなりません。)


税制改革はもちろんのことですが、日本も国籍や移民に関する「ビッグバン」
を近い将来行わないと、ますますグローバルな競争の中での状況が厳しくなる
感じがしますが、いかがでしょうか?


  ※KIAORA MAILニュージーランド掲載
  2000.12.01


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