ニュージーランドの50代が持つ不安



 
「将来住んでみたい国は?」  

先頃、日本経済新聞が50代の読者に対して行ったアンケート調査で、ニュージ
ーランドがオーストラリア、ハワイに次いで、見事第3位にランクされたよう
ですね。この結果をニュージーランドファンの皆さんはどう感じているでしょ
うか?

ニュージーランドは人口が少なく、経済規模は日本などから比べるときわめて
小さいけれど、業界ごとに見てみると日本より遥かに進んでいる産業もあった
り、また経済を発展させるために世界から優秀なビジネスマンや投資家を集め
ようと、世界でも稀な「永住権に切り替え可能な労働ビザ」という画期的なビ
ザの発給をスタートさせたりと、小さな国だからこそ逆に小回りがよく効き、
思い切った政策がすみやかに実施できるという面があります。
しかし、この国も単なる地上のパラダイスではなく、現実的な不安要素も抱え
ていることも確かです。
今回はニュージーランドの50代が持つ不安にスポットを当て、お伝えします。

「今、ニュージーランドの50代が持つ不安」-それは雇用不安です。

ザ・ニュージーランド・ヘラルド紙によりますと、現在、ニュージーランドの
50代で定職に就いて給与などを得ている割合は、全体のなんと半分まで低下し
ているとのこと。これは政府の統計には出て来ない数値で、問題は我々が知ら
ない間に社会的なものにまで発展していると報じています。
マネージメントコンサルタント業界では「45歳を過ぎた男性は新たな職に就け
る可能性がきわめて低い。」というのが通説になってきているそうです。

一般の統計では「ニュージーランド人の50代と60代の女性が社会に出て働く割
合は年々上昇してきている」とされていますが、しかしその実際を見てみると、
その半数以上はフルタイムではなく短時間のパートタイム。

一方、男性を見てみますと、55歳〜64歳でフルタイムの職に就いている割合は、
30年前(1970年)では8割以上でしたが、今では50%を下回っている結果が出
ています。つまり55歳以上の男性の2人に1人は定職に就いていないというのが
現在のニュージーランドの姿なのです。


ニュージーランドではまもなくベビーブーマーが定年時期を迎えようとしてい
ます。この世代は購買意欲が旺盛なため、貯蓄額が少ない世代とも考えられて
いますので、「ベビーブーマーのリタイアメント」はニュージーランド政府に
とっても既存の年金制度を脅かす要因と言えそうです。

さて一世代下の45歳〜54歳はどうでしょう?この世代でも今やフルタイムの仕
事を持っている割合は75%まで低下しています。これは「リタイアする年齢が
どんどん下がって来ている」ことを物語っていますが、ただ単に悠々自適なリ
タイアメントライフを過ごしている人ばかりとは言えない気がしますね。

熟年層の就業率がなぜこれまで低下しているのか、複雑な要因がミックスされ
ているため、まだはっきりした理由はわかっていないようですが、過去30年を
振り返って見ると、ニュージーランド全体の雇用数そのものが減少しているこ
とも明らかになりました。
これは景気のサイクルや政権の交代などによる影響よりも、むしろ社会の構造
的な変化が要因となっていると伝えられています。


世界的なトレンドで、技術革新により新たなニーズが生まれ、雇用が創造され
る一方で、やはり消滅していく仕事もあるのです。テクノロジーの導入により、
昨日まで人間が行ってきた仕事は機械がするようになる。そうなるとこれまで
の熟練工の存在価値が一日にしてなくなり、職が失われてしまうのです。
こうした社会の構造的な変革の結果として、今ニュージーランドでは50代以上
の雇用が少なくなって来ていると考えられているわけです。

日本でも今や企業の効率化が強調されていますね。雇用のリストラが実施され
ると企業の株価は下がらず、むしろ上昇します。そして株主へのリターンが増
大します。また仕事は絶えず自動化されたり、人件費の安い地域に職が移動し
てゆく。これが世界規模で毎日行われているのが現状ですよね。

各国の政府は「経済が成長すれば新たな雇用が自国に創造される」と考えます。
ニュージーランドでもこの15年間、ずっとそう言われてきました。

確かにアメリカでも「IT投資を主導に積極的な設備投資を行い、雇用のリスト
ラを強化すれば、一時的には失業率が上昇したとしても、景気が底を打った後
にベンチャー企業が勃興し、それで雇用が吸収され、結果的に史上最長の好景
気をもたらした」わけですが、このアメリカの成功パターン、今後も必ず再現
するとは言いきれません。逆にそれはもう古い考えとする見方もあるようです。

『これからは経済成長が必ず雇用を創造するとは限らない。雇用の回復なき経
済成長(=Jobless Growth)の時代』とする考えもあるのです。

世界的に見れば大企業が熟年層の経験を生かし、定年後もコンサルタント役と
して社外から経営面のアドバイスを行うなどの例はありますが、ニュージーラ
ンドに関して言えばそうした大企業そのものの数が少ないというのも現状です。


日本の50代の間でも将来の移住先として人気が高まってきたニュージーランド。
もしその世代の方がニュージーランドに移住されるなら、ビジネスビザを取得
し、現地の同年輩とともに、お互いの経験やスキルをフルに生かしながら一緒
にビジネスを成長させていける、そうした移住スタイルが実現できれば最も望
ましいと考えますが、いかがでしょうか?


  ※KIAORA MAILニュージーランド掲載
  2000.10.15


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