缶入りスパゲッティ



 
 ニュージーランドに来たら何を食すべきだろうか。

 一般的なところでは、ラム肉、ビーフジャーキー、ワインにマヌカハニーと
 いったところではないだろうか。但し、これらはニュージーランドの名産と
 いうだけで、ニュージーランド人が常食しているわけではない。
 独立国としての歴史が比較的浅いニュージーランドでは、レストランといっ
 ても、和食や中華、フレンチのように確立された「ニュージーランド料理」
 というものがあるわけではない。ニュージーランド人に「ニュージーランド
 料理ってどんなものがある?」と聞いても、大抵は「フィッシュアンドチッ
 プス」のようにイギリスから伝わった料理や原住民であるマオリ族の料理な
 どを思い浮かべ、「でも、それって感覚的にちょっと違う気がする。」と行
 き詰まってしまう。

 そこで今回、ご紹介したいのが『缶入りスパゲッティ』である。
 延びに延びまくった調理済みのスパゲッティが缶に入っているといった代物
 で、色々なメーカーから出ているが、どれもオレンジ色の何とも言えないソ
 ースと一緒に入っている。
 私とこの缶入りスパゲッティとの出会いは、生まれて初めての海外旅行で7
 日間ニュージーランドに滞在した折に、ホストファミリーが出してくれた朝
 食であった。
 サンドイッチ用パンのトースト2枚の上に鍋で温めた缶入りスパゲッティが
 「どべっ」とかけてあるものが出された瞬間は、それが何なのかよくわから
 なかった。それというのも、缶に詰められた状態で既に延びている麺を鍋で
 かき混ぜながら温めるのだから、麺は全て1〜2センチくらいの細切れになっ
 ているのだ。更に驚くべきは、その味である。ホストファミリーの見様見真
 似でフォークとナイフで食パンを切り分け、スパゲッティと一緒にほおばっ
 てみたが、オレンジ色のソースにはイマイチしまりがなく、スパゲッティに
 は勿論コシがなく、パンはソースがしみてふやけてしまい、何とも言えない
 食感を生み出していた。同じものが2度目に出された時には、パンがふやけ
 る前に慌てて食べてしまったが、それでもあの味はお世辞にも「おいしい」
 とは言えなかった。

 確かどこかのサイトで「あなたのニュージーランド人度チェック」というよ
 うなチェック表があり、その中に「麺は延びるまで料理するのが当たり前」、
 「アルデンテという言葉を聞いたことがない」というような項目があった。
 どうやらニュージーランド人は、麺のコシというものを気にしないらしい。

 とにもかくにも、このファミリーのママは、料理があまり上手な方ではなく、
 スパゲッティについても、この一家特有の食事なのだと理解していたが、そ
 の半年後、語学留学でニュージーランドに戻ってきた時に滞在したホストフ
 ァミリーでも、しっかり買い置きしてあるのを見かけた。割と食通なこのフ
 ァミリーでも、やはりトーストに「どべっ」とかけるスタイルは前述のファ
 ミリーと同様であった。唯一の違いと言えば、このファミリーでは大人の食
 事と子どもの食事とが分かれており、大人の食事にこのスパゲッティが出る
 ことはなかったことである。

 その後、滞在期間が長くなるにつれ、ニュージーランド人の友人も増え、家
 に招かれたり、フラットメイトとして1軒屋で共同生活する機会もあり、こ
 の缶入りスパゲッティがニュージーランド人にとって極めて一般的な保存食
 であることを確信するに至った。
 「郷に入っては郷に従え」ということで、今ではすっかり馴染んでしまった
 缶入りスパゲッティだが、そのままではやはりおいしくない。

 私の食べ方は、
 ・まず、鍋で温める際にみじん切りのにんにくと胡椒を混ぜる。
 ・温める際には、細切れになり過ぎない程度にかき混ぜる。
 ・パンは、片面の焼き目を少し薄めにし、もう片面はこんがりとトースト。
 ・ホイルかトレーに焼き目が薄い方を上にしてパンを敷き、スパゲッティを
  のせる。
 ・スパゲッティの上には薄くスライスしたチーズをのせ、チーズがとけるま
  で更にトーストする。
 (チーズをのせて更にトーストするので、片面は焼き目を薄くしておくと出
  来上がりでちょうど良い具合に焼き目がつくというわけである。)
 
 仕上げにバジルやオレガノ、タイムなどが入った「イタリアンハーブ」を上
 にかければ一層おいしくなる。トーストに「どべっ」とかけただけでは、ふ
 やけやすく、嫌な食感を生み出すサンドイッチ用のパンも、このように両面
 をトーストすることによってカリカリになり、スナック感覚で楽しめるのだ。 

 ニュージーランドに長期滞在するのであれば、是非お試しいただきたい缶入
 りスパゲッティ。短期ステイでも、モーテルなどキッチンのついた宿に泊ま
 れるのであれば、機会は十分にあるだろう。大手スーパーには必ず置いてあ
 り、価格も1〜2ドルと求めやすい缶入りスパゲッティで、ニュージーラン
 ド風の朝食を試してはいかがだろうか。

 



  ※KIAORA MAILニュージーランド掲載
  2005.02.02


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